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はじめに

このWoLF PSORTチュートリアルは2006年に産総研・生命情報科学研究センター (CBRC)で行なわれたバイオインフォマティクス実習コースの教材として作成しました。

チュートリアルの構成

このチュートリアルは2部に分かれています。wolfpsort.orgにアクセスし、WoLF PSORTのサーバに蛋白質の局在部位を予測させて、予測結果を理解するまでのサーバ・チュートリアルと、公開サーバを経ずに自分のコンピュータでWoLF PSORTを走らせるパッケージのインストールを学習する為のパッケージ・チュートリアルを用意しました。以下の説明を読まずに進むと分かりにくいはずですが、プレゼン資料に進めたい方はこのページ下方のリンクを使ってください。

実習環境

(著者の希望に沿って)実習コースのこの項目はLinuxの一種であるKnoppixで行なわれました。システム管理者以外の方ならLinuxを使ったことの無い方が多いかと思いますが、今後一般人でも触れる機会が多くなると予想されます。従って、このチュートリアルはWoLF PSORTの使い方と共に、Linuxを使う際に覚えると便利なヒントも多少入れるように努力しました。

蛋白質の細胞内局在について知識のある方はこれから実習資料へ進んでも良いが、そうでない方にはこのページを読んでから進めることをお勧めします。

実習資料

[WoLF PSORTサーバの使い方] [フレーム無し版] [印刷用]
[WoLF PSORTパッケージのインストールと使い方] [フレーム無し版] [印刷用]
[蛋白局在化についての解説プレゼン資料

蛋白質局在予測問題

真核細胞の構造について

真核細胞は生体膜で区切られた細胞小器官(細胞内器官、オルガネラorganellaeともいう)から構成されています。
細胞小器官で構成される動物細胞の模式図

生体膜で区切ることにより、小器官の内側と外側の間に自由拡散を防ぎ、各小器官にその小器官が担う機能に合った生化学環境が可能となります。例えば、一般に細胞内のpHは中性の7に近いが、生体高分子の加水分解が行なわれる水解小体(ライソゾームlysosome) のpHは約4.8に保たれています。水解小体で働く分解酵素もそれに応じ、酸性の環境にのみ分解反応を効率よく触媒します。この仕組により、水解小体以外の場所で分解酵素が暴走し、分解すべきでない生体高分子まで分解してしまうことが防がれています。(水解小体を構成している蛋白質などは別な機序によって保護されています)。

蛋白質局在化

前節で書いた通り、真核細胞では様々な生体膜で自由拡散を防ぐことは細胞小器官の役割分担を可能にしています。一方、この構造は細胞質で作られる蛋白質を、機能すべき小器官内又は小器官膜に運ばなければならないという問題を生んでいます。真核細胞には蛋白質を特異的に認識し、認識された蛋白質を生体膜の反対側に運ぶ、又は生体膜に入れる(膜蛋白質の場合)仕組が存在します。その代表的なものとしてアミノ酸配列のN末端に位置されるシグナルペブチドが挙げられます。

局在化シグナルとWoLF PSORT

WoLF PSORTの予測法はアミノ酸配列にある局在化シグナルを利用しています。従って、局在化シグナルについての知識を持つと、WoLF PSORTの予測結果や予測の限界は理解しやすくなります。ここでは、局在化シグナルの代表例とも言えるシグナルペプチドについて簡単に説明します。

シグナルペプチド

小胞体の膜を通る(或は通らずに入る)蛋白質は粗面小胞体に結合しているリボソームに翻訳され、小胞体膜を通らない蛋白質は小胞体と結合しないフリー・リボソーム(free ribosome)に翻訳されます。リボソームそのものは同じですが、翻訳が行なわれる場所が違う為、翻訳産物の運命が分かれます。

リボソームは蛋白質をN末端側から翻訳していきますが、最初の15〜40残基ぐらいの配列によって、小胞体と結合するかどうかが決まります。結合させる配列はシグナルペプチド(signal peptide)と呼ばれます。小胞体を通った後、やがて細胞外に分泌されることが多いので分泌シグナルペプチドと呼ばれることもあります。多くの場合、小胞体を通った後シグナルペプチドが切断され、アミノ酸配列のその部分は成熟した蛋白質に含まれません。シグナルペプチド配列はひとつの決まった配列ではなく、沢山のシグナルペプチド配列が観察されますが、ある程度の共通性が見られます。典型的なシグナルペプチドは以下の3領域から構成されています。

領域覚え方特徴
n region末端側陽電荷の多い領域(1〜12残基)
h regionHydrophobic疎水性の高い領域(7〜15残基)
c region(末端側)電荷が少なく、やや親水性の領域(3〜8残基)

また、切断部位の前の残基は通常アラニンで、切断部位から−3の位置には アラニンとロイシンがよく見られます。

シグナルペプチドと関連局在化シグナル

以上小胞体移行シグナルとも言えるシグナルペプチドについて説明しましたが、シグナルペプチドの起源はバクテリアのような原核生物にあります。原核生物には小胞体がなく、シグナルペプチドを持つ蛋白質は細胞膜を通り、直接分泌される、もしくは膜蛋白として細胞膜に入ります。その他に蛋白質をミトコンドリアと葉緑体移行させるN末端シグナルも存在します。その局在シグナルはどれも進化的に関連していますが、特徴はそれぞれ少し異なります。従ってWoLF PSORTは複数の特徴量を使って、これらの局在化シグナルを予測しています。

WoLF PSORTの予測法

蛋白質局在予測問題とは蛋白質のアミノ酸配列から蛋白質が機能する細胞内小器官を予測する問題です。WoLF PSORTは2種類の情報を基に予測します。 また、WoLF PSORTの予測では使われていませんが、局在部位と機能を考える上に参考となる配列類似度と配列アライメントもWoLF PSORTサーバから見ることができます。

実習資料

[WoLF PSORTサーバの使い方] [フレーム無し版] [印刷用]
[WoLF PSORTパッケージのインストールと使い方] [フレーム無し版] [印刷用]
[蛋白局在化についての解説プレゼン資料


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